新築にするか、リノベーションにするか?!

リノベーションを計画する時、古い建物に大きなお金を投資をすることは妥当か?と考える方は多いと思います。建てて30年経てば壊して新築にするというのが、長年、日本の住宅事情であったため、新築にするか、リノベーションにするかと悩む方は多いです。一方で世界を見ると欧米は日本に比べて古い建物を大切に使い続けます。イギリスにはサーベイヤーという資格があり、既存住宅の状況を適切に評価する人達がいます。サーベイヤーは既存の建物を適切に評価し、住まい手が投資するか、しないかを判断するための重要な情報を提供してくれるのです。

日本でも現状の劣化状況を調査する「既存住宅状況調査技術者(資格者)」という資格があります。私も資格者証を保有していますが、基本的には劣化(傾き、割れ、腐朽、腐食など)について調査をします。しかし、リノベーションをするか、しないかを決めるには判断材料が少ない場合があります。耐震性や省エネ、温熱など、更なる調査を実施し、診断書が提示できる資格はないかと探していた時に「住宅医」という資格に出会いました。

「住宅医」は劣化の改善とあわせて、耐震性や温熱性についても既存の状況を適切に評価し、より良い改善策を提案することができます。また、違法や既存不適格が多い既存の建物を法的に適切な状況にするため、行政と協議を実施し、法的整理を実施することができる、現在、過去の建築の法律に精通した者でもあります。あわせて、税制優遇や補助金等の施策にも精通しているため、行政支援を活用したリノベーションを実施することができます。これらの情報を提供できる「住宅医」は新築とリノベーションのどちらを実施すると良いかについて、分かりやすい判断材料を用意できる資格者です。

              

                 エコロジー

私がいままで調査にうかがった家は、ほとんどが断熱の基準(現行基準)を満たしていませんでした。現行基準のベースは平成11年に制定されたものですが、この基準を満たしていない住宅がほとんどです。リフォームをする家は寒い家が多いということです。断熱は家の外周部(外皮という)に断熱材や複層ガラスを施し、熱の移動を抑えることで、冬の寒さや夏の暑さを軽減する、家の性能として重要なものです。日本では、採暖(暖を採る)という文化が強く、部屋の温度を快適にすることが、ヨーロッパやアメリカに比べて遅れ、住まい手が「我慢する」ことで省エネ(電気代やガス代等の節約)を実現してきました。しかし、世界的に省エネ基準レベルが高まるにつれて、日本の住宅においても、省エネが必須となり、住まい手の認識も変わってきました。また、昨今の調査によれば、寒さは健康状態に大きな影響を及ぼすことが判明し、断熱性能は、省エネのみならず、住まい手が健康に過ごすために必要な性能といえます。一方で、ヨーロッパ並みの断熱住宅を目指すと壁が厚くなり生活空間が狭くなったり、窓を高性能ガラスにすると、コストは増加します。また、窓より壁の方が断熱性能が高いので、断熱を目的に安易に窓を少なくするといったことでは、暗い空間になってしまいます。リノベーションにおいては、使用する空間や人数、どのような空間にしたいかということから、適切な範囲、適切な性能の断熱改修を実施することが必要です。断熱性能の目安として専門的な熱還流率UA値や日射取得率ηA値という数値だけでなく、温熱シュミレーションを活用した室温を目安にするのが有効です。目安が室温であれば、イメージがしやすいと思います。温熱において快適な 空間では行動が活発となり、生活の幸福度が向上します。

             コンパクトリノベーション

リノベーションは住まい手の要望からスタートします。長年、住んでいる場合、中古住宅を購入しリノベーションを実施する場合と環境はさまざまですが、要望のかなり上位にあるのはコストではないでしょうか。私は住まい手が要望するコストは要望の中で一番重要であると思います。設計士の中にはコストを無視して、よいものを追求する方もいらっしゃいますが、限られたコストの中で如何に良いものを提案できるかが重要であると考えます。しかし、やみくもに質を下げるといったことはしたくありません。ある程度の積算知識より、住まい手の要望とコストを勘案し、リノベーションの実施が可能かどうか判断します。リノベーションの良いところは、施工範囲や施工深囲を調整できるところではないでしょうか?リビングの床はムクにする、だけど2階は使用していないので施工範囲から外すといったことが可能です。生活範囲を狭くすることは、生活がコンパクトになり効率といった面からいうと有効です。また、ムダな空間を減築することもコストパフォーマンスにおいて有効な場合があります。建物を維持管理していくにはコストがかかります。解体だけだと費用が安くおさまるので。不要な部分は減築してしまうリノベーションのニーズは多くあります。

              小さな万能空間

昼寝空間、書斎、パソコンコーナー、収納空間・・・。これらを1つの空間でまかなう事ができれば、その空間はいろいろな役割をもたせた空間となります。居間の付近にこのような空間があれば重宝します。特に畳の間は万能空間になりやすく、6帖くらいあると様々な用途で使用できますが3帖や2帖がよいと思います。狭い畳の間は和室という空間ではなく、天井を低くすると、茶室のような落ち着いた空間になります。ほかに、キッチンの傍の万能空間をつくると便利です。家事室として、パントリーとして、収納として、隠れ家的な空間として、さまざまな用途で使用できます。階段下の小さな万能空間は書斎、昼寝部屋に重宝します。小さな万能空間の代表的なものといえばロフトを想像される方が多いと思います。同一階の屋根裏の形態、上階の屋根裏の形態と大きく分けて2つの形態がありますが、同一階、上階ともロフトが構造上、設けることができないという場合、部屋内の一部を上下の2空間に分割し、ロフトのような空間を設けることがあります。籠り空間と収納を上下で設けることで、その部分は万能空間となります。これは天井の高さにもよりますが、木造住宅だけではなく、マンションでも設けることが可能です。

              部屋の用途変更

昭和迄の建物は親戚や会社、近所の人を迎える空間を住宅の中で良い場所に配置することをプランニングにおいて重要としていました。代表的なものは古民家ですが、一般的に古民家の間取は和室の続き間が応接としての役割を果たし、そこが住宅の中で一番良い、南に配置されています。平成に入ってからは、家族が使いやすいことがプランニングにおいて最も重要とされ、応接という部屋はなくなっていきました。リノベーションにおいても、応接部屋を家族のための空間にすることは多くあります。また、以前は部屋を小さく間仕切り、キッチンやダイニング、リビングそれぞれを1つの単位としていました。しかし、生活動線やコミュニケーションを円滑にするため、部屋の集約が行われ、多くの用途を満たす空間が望まれるようになりました。応接もこの多機能空間に取り込まれ、居間兼応接やダイニング兼応接といった多機能部分の空間設計が重要となると思います。

                伝統を残す

既存の物を完全に撤去し、リノベーションを実施することも多くありますが、残したい物や、活かしたい物もあります。特に古民家とよばれる建物には良質なものが多く使われています。例えば構造体では差鴨居は良質な材料を使っており住まい手も残したいと要望されることが多いです。これを残すと、鴨居高さが低く、現代の2mの高さを確保するのがむずかしくなりますので床を下げるなどの対策が必要となります。また、真壁づくりで木が化粧材として活用されている空間は残したいと要望されることが多いです。つまり、伝統とは「木組み」や「木による造作」を指すことが多く、生活スタイル(間取り)や機能性をそのまま残すことは特別な場合でない限りありません。ただ、仏間のある和室のみはそのままにすることが多く、プランをするときも、そこだけはさわらないようにしたいと要望されます。現代の建物では畳のある部屋がなくなりつつあるので、住宅に畳の文化を残すため、古民家の畳は残していきたいと思います。